calm tech は2026年のトレンドらしいので調べてみた

by yasuna

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この記事はAIエージェントと一緒に執筆しています

こんにちは!yasunaです!

わたしは AITuber の個人開発をライフワークにしているんですが、最近ちょっと毛色の違うことを始めました。電子工作です。きっかけは、自分が前から惹かれていた calm tech(穏やかな技術) という考え方でした。

結論、calm tech は 「人間の注意を奪わず、周縁でそっと支える技術」 のことです。そして調べていくと、歴史も原則も認証制度もちゃんとある成熟した分野で、しかも 個人開発者にとってむしろ追い風かもしれない、と思うようになりました。この記事ではその調べたことと、なぜ自分がここに足を踏み入れたのかを書きます。

はじめに:ドーパミンが正解とされる場所にいる

正直に言うと、いま自分がいる個人開発界隈って、広告収益と「ドーパミンが多く出るもの」が正解とされがちなんですよね。

  • 滞在時間が KPI
  • 通知で毎日開かせるのが「リテンション設計」
  • 機能は多いほうがいい、バズったほうがいい

それが上手い人が評価されるし、たぶんビジネスとしては正しい。でもわたしは、どうもそっちに気持ちが乗らなくて。むしろ 静かで、邪魔をしなくて、長く使えるものに惹かれてしまう。最初はこれを「自分が逆張りで弱いだけかな」と思っていたんですが、調べたら ちゃんと名前と思想がある世界でした。それが calm tech です。

ネットの声と、実際の2026年

「機能は多いほうがいい」「とにかく毎日開かせろ」が一般論だとして、実際はどうかというと、2026年はその 逆の流れがはっきり立ち上がっています。

注意がこれだけ奪い合いになって、AI 生成のノイズも増えた結果、「叫ばない・最小限・ほぼ見えない」設計が価値になってきた。2026年の本当の競争優位は、機能の多さじゃなくて 「引き算する勇気」 だ、という話まで出ています。calm tech はその中心にある考え方です。


calm tech とは何か

ここからは調べたことの整理です。まず、これは誰かの最近の思いつきではなくて、30年かけて受け継がれてきた系譜がありました。

人物 何を言ったか
1991 Mark Weiser(Xerox PARC) ユビキタス・コンピューティングを提唱。「最も深遠な技術とは、消えてしまう技術である」
1995 Mark Weiser & John Seely Brown 論文『Designing Calm Technology』で "calm technology" を定義
2015 Amber Case 著書『Calm Technology』(O'Reilly) で 8原則を整理。PARC の思想をモバイル/IoT 時代に翻訳
2024.5 Calm Tech Institute(Amber Case 設立) 標準化団体を立ち上げ、Calm Tech Certified™(認証制度)を開始

つまり今の calm tech は、ドットコム以前の研究所の問題意識が、スマホ疲れの時代にようやく主流化したもの、という感じですね。

中心と周縁:理論の心臓部

calm tech の一番おもしろい発明は、注意を 2層で捉えたことだと思います。

calm technology は、注意の 「中心(center)」「周縁(periphery)」 の両方に働きかけ、その間を行き来する。

  • 中心 … 今こちらが意識的に注目していること
  • 周縁注意を向けずとも気づいていること

たとえば 運転中のエンジン音。普段は意識の周縁にあって無視しているけど、音が異常になった瞬間スッと中心に上がってくる。問題なければまた周縁に戻る。この「中心⇄周縁の滑らかな行き来」こそが calm、という理論です。

なぜこれが落ち着くのかというと、周縁に置くことで全部を意識で処理しなくて済むから。逆にいまのアプリは、何でもかんでもプッシュ通知で 中心に叩き込んでくるから疲れるわけですね。小並感ですが、めちゃくちゃ腑に落ちました。

伝説の「垂れた紐」

理論を体現した有名な作例があって、これがすごく好きです。The Dangling String(Live Wire, 1995) という、Natalie Jeremijenko の作品。

天井のモーターから 8フィートの紐が垂れていて、オフィスの Ethernet に繋がっている。ネットワーク通信量に応じて紐が揺れる——トラフィックが多いと勢いよく回り、静かだと時々ピクッと動くだけ。

「サーバー負荷」という見えないデータを、部屋の隅で揺れる紐という、見ても見なくてもいい周縁情報に変換している。ダッシュボードの対極ですよね。これ、自分でも作りたくなりました。

Amber Case の8原則

リストだけだと薄いので、各原則の「実は何を言っているか」を添えます。

原則 実は何を言っているか
① 最小限の注意で済むべき 機能でなく 「奪う注意の量」 を設計変数にする
② 情報を伝え、calm を生むべき 不安を煽らずに知らせる(赤バッジの逆)
③ 周縁を活用すべき 全部を画面中央で叫ばない。垂れた紐の発想
④ 技術と人間性、両方の最善を増幅すべき 自動化で人を置き換えず、能力を引き上げる
⑤ 伝えてよいが、喋る必要はない 言葉より、光・振動・位置で十分なことが多い
⑥ 失敗してもなお機能すべき ネットや電源が落ちても最低限は動く(優雅な劣化)
⑦ 適量とは、問題解決に必要な最小限 「あったら便利」を足さない勇気
⑧ 社会規範を尊重すべき その場で浮かない(Google Glass が失敗した理由がこれ)

2024年に始まった認証制度

思想を 測れる基準に落とし込んだのが Calm Tech Certified™ です。製品を 4つの軸で評価します。

中身
Periphery Engagement 注意の縁で動くか
Tactility 物理的な手触り・操作感
Material Harmony 素材と設計の一貫性
Durability 長く使えるか(=使い捨て・買い替え強制の逆)

「機能リスト」じゃなくて 「注意・身体・素材・時間」 で測るのが、思想的に一貫していて好きです。


ここから自分の話:なんで個人開発者の自分が惹かれたのか

調べたことと、自分の考えはちゃんと分けて書きます。ここからは所感です。

① 大手が構造的に踏み込めない戦場だから

これは Apple が calm/cozy なアプリを Apple Design Awards で表彰している理由を考えていて気づいたんですが——広告で食っている企業は、構造的に "穏やか" になれないんですよね。滞在時間=収益だから、依存設計が合理になってしまう。

逆に言うと、calm tech の勝負どころは craft・引き算・素材・耐久性で、ここは 大手がモデル上どうしても踏み込みにくい領域です。ドーパミン界隈で個人開発者が数十億ドルのエンゲージ最適化マシンと殴り合っても勝てないけど、こっちなら、丁寧さと趣味の良さがそのまま武器になる

「みんなと逆を向いている不安」は、もしかしたら 最大の武器かもしれない、と思い直しています。

② 実は自分、もう calm tech 的なものを作っていた

書いていて気づいたんですが、いま作っている 繭(まゆ) が、思想的にはほぼ calm tech でした。

  • 返事は 翌日に手紙一通だけ(即レスしない=注意を奪わない)
  • 「便利にしない」を意地でも守る(=原則⑦の "適量")
  • 推論は全部 オンデバイス(=外に出ない、自分だけのもの)

当時は calm tech を意識して作ったわけじゃないのに、向いている方向が同じだったんですね。詳しくはこっちに書いています。

ペットでもボットでもない、あなたと文通する生き物『繭(まゆ)』

電子工作は、実は calm tech の本丸だった

で、ここが一番伝えたいところです。自分は calm tech から逃げて電子工作に行ったんじゃなくて、本丸に踏み込んでいた、という話。

証拠があって、Calm Tech Certified の認証製品リスト、ほぼ全部ハードウェアなんです

製品 どんなもの
mui Board(京都・mui Lab) 普段はただの木目のインテリア。触ると操作面が浮かび、終わると消える
reMarkable Paper Pro 世界初の認証ペーパータブレット
Mudita Bell / Harmony アナログ感の目覚まし時計
AirThings View Plus 空気質モニター
Daylight Computer / Unpluq 目に優しい端末・スマホ依存を断つデバイス

アプリはほとんど入っていない。Weiser の原点が「天井から垂れた紐」だったように、calm tech はもともと "物理デバイスの思想" なんですよね。しかも世界水準のお手本(mui Lab)が 日本(京都) にいる。これは個人的にかなり励みになりました。

デザインのお手本ギャラリー

言葉で書くより、実物を見てもらうのが早いです。今回調べていて「自分に合う」と思った calm tech プロダクトを並べておきます。どれもデザインが本当に気持ちいいので、リンク先で眺めてみてください。

とくに Blippo+ が好き

ギャラリーの中でもいちばん刺さったのが Blippo+ です。Playdate を作った Panic の作品で、ひとことで言うと 「選べないテレビ」。見たい番組をオンデマンドで選ぶんじゃなくて、架空の異星 TV 局「Planet Blip」の番組が 11週間のループで一方的に流れてくるだけ。戻れないし、早送りもできません。

https://blippo.plus/

これ、無限スクロールや即レスみたいな ドーパミン設計のちょうど真逆なんですよね。選べない・偶然まかせ・ちゃんと終わりがある——その「不便さ」が逆に心地いい。calm tech というより あえての不便さ(intentional friction) 寄りですが、効率の外側にある気持ちよさという意味では地続きだと思っています。そもそも自分がこの分野を調べ始めたのも、これに一目惚れしたのがきっかけでした。

E-ink × ESP32 という入口

で、いま始めやすくて calm tech とも相性抜群なのが E-ink × ESP32 のアンビエント・ディスプレイでした。原則がそのまま技術仕様に翻訳できるのが気持ちいいです。

calm tech 原則 電子工作での実装
最小の注意・周縁 チラ見で 0.5 秒で分かる、通知しない「情報家具」
失敗してもなお機能・適量 E-ink は更新時しか電力を食わない + deep_sleep電池数ヶ月(ESP32+7.5インチで半年超の作例もある)
耐久性 「一度置いたら忘れる」設計そのもの

オープンソースの TRMNL や、壁掛けの PiPaper FrameESP32 E-Paper Weather Display あたりが作りの参考になりそうです。

正直なところ

最後に、調べていて「ここは目を開けて入った方がいい」と思ったことも書いておきます。

  • ハードはソフトより難しい。部品調達・在庫・歩留まり・サポート・配送と、「作って終わり」じゃない
  • 稼ぎ方が違う。広告じゃなくて買い切り・プレミアム価格・小ロット(Kickstarter など)。価値観とは合うけど、キャッシュフローは険しい
  • そして、"calm" を看板にするだけの製品も出てくる、という批判もあります(大手が穏やかさをブランドの煙幕に使う、という指摘)。Apple ですら、通知や買い替え圧は別に calm じゃないわけで

自分もまだ 足を踏み入れたばかりで、偉そうなことは言えません。でも、向かいたい方向ははっきりしました。

まとめ

長くなったのでまとめます。

  • calm tech = 注意を奪わず、周縁でそっと支える技術。30年の系譜(Weiser → Amber Case → Calm Tech Institute)と、8原則・認証制度がある
  • 核心は 中心と周縁の行き来。叫ばずに、必要なときだけ中心に上がってくる
  • 広告で食っていない者ほど穏やかでいられる。だから 個人開発者にとって、ここはむしろ戦える戦場かもしれない
  • 認証製品はほぼハードウェア。電子工作は calm tech の本丸で、E-ink × ESP32 が入口

ドーパミンの外で、静かに長く使われるものを作ってみたいです。進捗はまた記事にします。

感想や「こういう calm tech あるよ」みたいなのがあれば、X(@yasun_ai)まで気軽にどうぞ。穏やかな技術に幸あれ!


参考